2015年11月15日

登場人物にメリハリを

最近、雨が多いですよね。
なんか今年の冬はまた大雪が降りそうな…そんな気がしてならないです。


「銀行員ゲームブック バンカーズクエスト」というゲームブックが発売されました。
早速、買って読んでみました。

 元カノが日本橋の外資系金融に勤めていて、銀行の業務がどんなものなのかはそれとなく聞いてましたが、それでも初めて聞くような専門用語が出てきて、それの説明もなされていて勉強にもなりました。

 調べてみたら作者の方、商科大学の出身のようですね。自分の専攻とされている知識教養をうまく作品に取り組むのは「送り雛は瑠璃色の」や「永劫選択」、「魔物たちの楽園―あるいは臨床心理学の楽園― 」などありましたが、この作品もそういった専門知識をうまくゲームブックに取り入れた、大人向けのゲームブックと言えそうです。

 ただ、残念なことに、バグが数箇所に確認されました。リンクミスなのか文章がおかしいのかはわかりませんが、ルートによってはいきなり会ったこともない人物との接触がかかれていたりと、矛盾や話飛びなどの不自然な部分が発見されました。

 以前の記事にも書きましたが、時系列を軸点とした単方向のゲームブックを書くと、どうしてもこういった矛盾の生じるルートというものは出てきます。ゲームブックを作ったことがある人なら誰でも経験があるのでは。

 話が複雑ならなおさらですね。多くの情報を同時に処理できれば間違えないのでしょうが、そういう人の方が少数派でしょう。

 推測ですが、作者がフローチャート図を書かなかったか、書いても機能しなかったのだろうかなとは思います。

一昔前は大きな紙をテーブルに広げてフローチャートを書き、本文とチャート図を照らし合わせてテストプレイして矛盾を探していたようですが、現代ではそういった不便を解消するデジタルツールも開発されています。

 本文を書いて選択肢と飛び先のパラグラフを指定すれば自動でフローチャートを作成して表示されます。フローチャート上のオブジェクトはタイトル文や色分けで区別できます。そのオブジェクトをクリックすればそのパラグラフの文章や選択肢も表示されるので、本文を読み選択肢を選びながらフローチャートの推移を視覚情報で認識できます。そうすると割と簡単に矛盾が発見されたりします。
 逆に文章だけで作ってフローチャート図を作らず、テストで矛盾を発見して訂正する場合なんかは地獄です。ですからゲームブックを作るならフローチャート図は作成しておいて損はありません。
 このブログで「The GameBook Authoring Tool」を強く勧めているのはそのためです。

 結局、ふさわしいパラグラフを探してそこから読み進めていきました。

 あとは、パラグラフが二つ跨いでいるような見開きのページで、ついつい目にした隣の別のパラグラフにある謎の解答らしき文を読んでしまうケースがありました。
 こういう部分は紙のゲームブックの弱点ですね。仕方ないといえば仕方ないのですが、読まなけゃいいのに何故か目がいっちゃう癖があるので困ります。(しかもそういう時に目にする情報って忘れずに覚えちゃうんですよ。。。)
ま、どうでもいい情報ですね。


 バグを抜かせば、個人的には面白い内容のゲームブックです。
久々に面白いゲームブックに出会えたかなといった感想です。あくまで個人的意見ですが。挿絵もインパクトの強い画風で一昔前のゲームブックを連想させるような感じです。

日常から非日常への展開のさせ方も不自然さが残らず、それでいて読み手を飽きさせないメリハリがあります。
選択させることを重視したパラグラフの作品が多いなか、これはそれぞれのパラグラフを読ませることににこだわっているよう。この辺は私好みですね。

 物語に陰険で卑劣な性格の登場人物を出すことにより、読者に反感を持たせてそれを原動力に読者を導いているようです。大概の人間は陰険で卑劣なタイプの人間を最も嫌う傾向がありますから、私もこいつは失脚させたいと思わせられました。ですが、陰険で卑劣なタイプでも感情に走るバカでなく、理屈を持ち出してくるクレバーなタイプなのでさらに厄介ですね。作家の人もこの手の人間が最も厄介だということは知っていて登場させたのだと思います。

 話の展開などこれ以上はネタバレになるので避けます。

 気になったのは登場人物の設定がなかなかしっかりしていた事ですね。人間関係がネックとなる現代社会を舞台にした創作では登場人物の特性は結構重要だったりします。

 創作物の登場人物はそれを創った作者より下ならありますが、作者そのものを超える事は絶対にありません。

 例えば、作品内でどんなに知識豊富で頭脳明晰な登場人物を書いたとしても、その作者より知識があったり、作者より頭脳明晰になることは絶対にないのです。
 なぜなら、その人物を設定して書いているのは何より作者ですから。作者は自分の知識やスキルを登場人物に投射します。登場人物が知っている知識は作者も知っている知識となります。そして登場人物の行動パターンや発想も作者のそれは超えられません。ありえないのです。

 逆に作者より知識やスキルの劣っている登場人物はいくらでも設定できます。利口な人間がバカを演じるのはできますが、バカが利口な人間を演じるのは中々上手くはいきません。

 よって作者のスキルが登場人物の特性に幅を持たせることができます。

こういった特性を理解していなかったりすると、例えば登場人物がみんな似たような口調で似たような話をしてしまったりします。そうなると人間同士のアクションも味気なく、メリハリもなくなります。

 その辺「バンカーズクエスト」は上手く差異を計っているかなという印象ですね。


 どうしても私たちは自分の視点を創作の主人公や登場人物に投射してしまいます。これはプロの作家でも同じである意味人間の自我が持つ性みたいなものなのでしょう。たとえば、男性の私に女性視点で物語を書いてくれと言われても、なかなか上手くはいかないものです。簡単な話、女性でないからです。

 ですが、女性に話を聞くなど情報を得るのはいくらでもできます。そういった情報を元に自分の中に幾つかの人格を形成しておくと投射しやすいと、ある著名な作家さんから伺った経緯がありますが、自分もその通りかなと思います。

 そのためにも作者側は日々、知識や教養、そして頭脳スキルの向上を怠らないことが重要かもしれません。マルチな分野において教養を深めておけば、物語の登場人物も多種多様な特性の人物が描けると思います。


 特にトリックスター的役割を持つ登場人物を放り込めると、ゲームブックの展開の幅はグッと広がると思います。なぜなら選択肢によって未来は変わりますからね。変わった先の未来でその登場人物が敵になっているか味方になっているかの変化も作れますから。

 もちろん、そのためには作者もトリックスター的な思考能力が求められますが…

 そこまでいかなくとも、様々な性格のオルターエゴを自分なりに作っておいて演ずることで自分の創作する登場人物にその人物像を投射できます。
 献身的で優しい側面を前面に押し出したペルソナで作成してもいいですし、逆に陰険で卑劣な側面を出したペルソナを作ってもいいでしょう。
 それが難しいなら、他人をモデルに登場人物を考察するのも手でしょう。特にネットの社会ではリアル社会とちがい素の人格が現れますから、利用するものは利用しましょう。
 おすすめなのは作り上げたオルターエゴと似た特性の人物に近づくことです。献身的な人物ならその特性をより引き出してそのパターンを自分に取り込むことでオルターエゴの特性を深めることができると思います。



 それはさすがにちょっと訳わからないよーという方には交流分析学を取り入れた登場人物設定をおすすめしましょう。

交流分析学は別名エゴグラムといい心理学の一種のカテゴリーの学問ですが、心理学ほど膨大でなく曖昧でもないので、簡単に覚えられます。
まず交流分析学では人を五つの性格に分けますが、専門用語で語っても仕方ないので、ここでは誰でも分かりやすいよう砕けた表現で書きます。まず自分の手の指をみてください。

 親指がお父さん指で、お父さんは頑固で批判的です。
 人差し指がお母さん指で、お母さんは優しく献身的です。
 中指がお兄さん指で、お兄さんは理屈っぽくあまり感情を表に出しません。
 薬指がお姉さん指で、お姉さんは自由奔放で遊び好きです。
 小指がこども指で、こどもは他人の目を気にしたり、とても従順です。

交流分析ではこの5つの性格があり、5個それぞれの性格を強弱のグラフに合わせて判断します。

お父さん思考とお兄さん思考が強いと頑固で理屈っぽい性格です。

そんなに深く考えずにこのグラフを登場人物全てに設定して性格を設定してみてください。この5個の特性に合わせて登場人物を5つに分けてもいいでしょう。

 登場人物のしゃべり方や行動パターンもその性格に合わせたものとして意識しながら行うと割と登場人物の差異が作れるようになります。
 実をいうとこの方法も受け売りだったりします。
結構簡単にできると思うので試してみるといいかもしれません。


…って、また記事にまとまりがなくなってしまった。。。

posted by 文芸遊戯研究会 at 21:16| Comment(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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