2015年11月15日

登場人物にメリハリを

最近、雨が多いですよね。
なんか今年の冬はまた大雪が降りそうな…そんな気がしてならないです。


「銀行員ゲームブック バンカーズクエスト」というゲームブックが発売されました。
早速、買って読んでみました。

 元カノが日本橋の外資系金融に勤めていて、銀行の業務がどんなものなのかはそれとなく聞いてましたが、それでも初めて聞くような専門用語が出てきて、それの説明もなされていて勉強にもなりました。

 調べてみたら作者の方、商科大学の出身のようですね。自分の専攻とされている知識教養をうまく作品に取り組むのは「送り雛は瑠璃色の」や「永劫選択」、「魔物たちの楽園―あるいは臨床心理学の楽園― 」などありましたが、この作品もそういった専門知識をうまくゲームブックに取り入れた、大人向けのゲームブックと言えそうです。

 ただ、残念なことに、バグが数箇所に確認されました。リンクミスなのか文章がおかしいのかはわかりませんが、ルートによってはいきなり会ったこともない人物との接触がかかれていたりと、矛盾や話飛びなどの不自然な部分が発見されました。

 以前の記事にも書きましたが、時系列を軸点とした単方向のゲームブックを書くと、どうしてもこういった矛盾の生じるルートというものは出てきます。ゲームブックを作ったことがある人なら誰でも経験があるのでは。

 話が複雑ならなおさらですね。多くの情報を同時に処理できれば間違えないのでしょうが、そういう人の方が少数派でしょう。

 推測ですが、作者がフローチャート図を書かなかったか、書いても機能しなかったのだろうかなとは思います。

一昔前は大きな紙をテーブルに広げてフローチャートを書き、本文とチャート図を照らし合わせてテストプレイして矛盾を探していたようですが、現代ではそういった不便を解消するデジタルツールも開発されています。

 本文を書いて選択肢と飛び先のパラグラフを指定すれば自動でフローチャートを作成して表示されます。フローチャート上のオブジェクトはタイトル文や色分けで区別できます。そのオブジェクトをクリックすればそのパラグラフの文章や選択肢も表示されるので、本文を読み選択肢を選びながらフローチャートの推移を視覚情報で認識できます。そうすると割と簡単に矛盾が発見されたりします。
 逆に文章だけで作ってフローチャート図を作らず、テストで矛盾を発見して訂正する場合なんかは地獄です。ですからゲームブックを作るならフローチャート図は作成しておいて損はありません。
 このブログで「The GameBook Authoring Tool」を強く勧めているのはそのためです。

 結局、ふさわしいパラグラフを探してそこから読み進めていきました。

 あとは、パラグラフが二つ跨いでいるような見開きのページで、ついつい目にした隣の別のパラグラフにある謎の解答らしき文を読んでしまうケースがありました。
 こういう部分は紙のゲームブックの弱点ですね。仕方ないといえば仕方ないのですが、読まなけゃいいのに何故か目がいっちゃう癖があるので困ります。(しかもそういう時に目にする情報って忘れずに覚えちゃうんですよ。。。)
ま、どうでもいい情報ですね。


 バグを抜かせば、個人的には面白い内容のゲームブックです。
久々に面白いゲームブックに出会えたかなといった感想です。あくまで個人的意見ですが。挿絵もインパクトの強い画風で一昔前のゲームブックを連想させるような感じです。

日常から非日常への展開のさせ方も不自然さが残らず、それでいて読み手を飽きさせないメリハリがあります。
選択させることを重視したパラグラフの作品が多いなか、これはそれぞれのパラグラフを読ませることににこだわっているよう。この辺は私好みですね。

 物語に陰険で卑劣な性格の登場人物を出すことにより、読者に反感を持たせてそれを原動力に読者を導いているようです。大概の人間は陰険で卑劣なタイプの人間を最も嫌う傾向がありますから、私もこいつは失脚させたいと思わせられました。ですが、陰険で卑劣なタイプでも感情に走るバカでなく、理屈を持ち出してくるクレバーなタイプなのでさらに厄介ですね。作家の人もこの手の人間が最も厄介だということは知っていて登場させたのだと思います。

 話の展開などこれ以上はネタバレになるので避けます。

 気になったのは登場人物の設定がなかなかしっかりしていた事ですね。人間関係がネックとなる現代社会を舞台にした創作では登場人物の特性は結構重要だったりします。

 創作物の登場人物はそれを創った作者より下ならありますが、作者そのものを超える事は絶対にありません。

 例えば、作品内でどんなに知識豊富で頭脳明晰な登場人物を書いたとしても、その作者より知識があったり、作者より頭脳明晰になることは絶対にないのです。
 なぜなら、その人物を設定して書いているのは何より作者ですから。作者は自分の知識やスキルを登場人物に投射します。登場人物が知っている知識は作者も知っている知識となります。そして登場人物の行動パターンや発想も作者のそれは超えられません。ありえないのです。

 逆に作者より知識やスキルの劣っている登場人物はいくらでも設定できます。利口な人間がバカを演じるのはできますが、バカが利口な人間を演じるのは中々上手くはいきません。

 よって作者のスキルが登場人物の特性に幅を持たせることができます。

こういった特性を理解していなかったりすると、例えば登場人物がみんな似たような口調で似たような話をしてしまったりします。そうなると人間同士のアクションも味気なく、メリハリもなくなります。

 その辺「バンカーズクエスト」は上手く差異を計っているかなという印象ですね。


 どうしても私たちは自分の視点を創作の主人公や登場人物に投射してしまいます。これはプロの作家でも同じである意味人間の自我が持つ性みたいなものなのでしょう。たとえば、男性の私に女性視点で物語を書いてくれと言われても、なかなか上手くはいかないものです。簡単な話、女性でないからです。

 ですが、女性に話を聞くなど情報を得るのはいくらでもできます。そういった情報を元に自分の中に幾つかの人格を形成しておくと投射しやすいと、ある著名な作家さんから伺った経緯がありますが、自分もその通りかなと思います。

 そのためにも作者側は日々、知識や教養、そして頭脳スキルの向上を怠らないことが重要かもしれません。マルチな分野において教養を深めておけば、物語の登場人物も多種多様な特性の人物が描けると思います。


 特にトリックスター的役割を持つ登場人物を放り込めると、ゲームブックの展開の幅はグッと広がると思います。なぜなら選択肢によって未来は変わりますからね。変わった先の未来でその登場人物が敵になっているか味方になっているかの変化も作れますから。

 もちろん、そのためには作者もトリックスター的な思考能力が求められますが…

 そこまでいかなくとも、様々な性格のオルターエゴを自分なりに作っておいて演ずることで自分の創作する登場人物にその人物像を投射できます。
 献身的で優しい側面を前面に押し出したペルソナで作成してもいいですし、逆に陰険で卑劣な側面を出したペルソナを作ってもいいでしょう。
 それが難しいなら、他人をモデルに登場人物を考察するのも手でしょう。特にネットの社会ではリアル社会とちがい素の人格が現れますから、利用するものは利用しましょう。
 おすすめなのは作り上げたオルターエゴと似た特性の人物に近づくことです。献身的な人物ならその特性をより引き出してそのパターンを自分に取り込むことでオルターエゴの特性を深めることができると思います。



 それはさすがにちょっと訳わからないよーという方には交流分析学を取り入れた登場人物設定をおすすめしましょう。

交流分析学は別名エゴグラムといい心理学の一種のカテゴリーの学問ですが、心理学ほど膨大でなく曖昧でもないので、簡単に覚えられます。
まず交流分析学では人を五つの性格に分けますが、専門用語で語っても仕方ないので、ここでは誰でも分かりやすいよう砕けた表現で書きます。まず自分の手の指をみてください。

 親指がお父さん指で、お父さんは頑固で批判的です。
 人差し指がお母さん指で、お母さんは優しく献身的です。
 中指がお兄さん指で、お兄さんは理屈っぽくあまり感情を表に出しません。
 薬指がお姉さん指で、お姉さんは自由奔放で遊び好きです。
 小指がこども指で、こどもは他人の目を気にしたり、とても従順です。

交流分析ではこの5つの性格があり、5個それぞれの性格を強弱のグラフに合わせて判断します。

お父さん思考とお兄さん思考が強いと頑固で理屈っぽい性格です。

そんなに深く考えずにこのグラフを登場人物全てに設定して性格を設定してみてください。この5個の特性に合わせて登場人物を5つに分けてもいいでしょう。

 登場人物のしゃべり方や行動パターンもその性格に合わせたものとして意識しながら行うと割と登場人物の差異が作れるようになります。
 実をいうとこの方法も受け売りだったりします。
結構簡単にできると思うので試してみるといいかもしれません。


…って、また記事にまとまりがなくなってしまった。。。

posted by 文芸遊戯研究会 at 21:16| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

デジタルとアナログ

今回の記事はただのコラムですので、あまり大したことは書いてません。暇つぶしにどうぞ。

ゲームブックの作成においてアナログしかなかった時代より、デジタルツールが豊富にある現代での作成のほうがかなり合理的になったというような話を前回のエントリーで記事にしました。

 ただゲームブックを作る側ではない読む側にとって、デジタルというのは必ずしも利便性に富んだだけのものでもないようです。


 私の親父なんですが、かなり昔からピュアオーディオマニアでして、その趣味を自分も継承したりしています。
経営から退いた数年前から親父がCDからレコード主体にクラシックを聴くようになり、私も親父のシステムでレコードを真空管アンプと木のスピーカーで聴く機会がありましたが、CDなどのデジタルとはまたひと味もふた味も違った味わいのある音で驚かされました。

 確かにCDはレコードよりも高音質という触れ込みで発展しました。
次の曲や前の曲への移動もいちいち針を持ち上げて予想した場所へと落とすレコードに比べて、CDはボタンひとつで移動できます。
何回も聞いていると針と盤の摩擦で音が劣化するアナログ盤に比べてCDはそれがありません。

 何もかもがレコードの不便を解消したCDは当時画期的で、瞬く間に普及しました。

 ですが、あれから30年近く経て改めてアナログ盤を聴いてみると、針を落とす行動も儀式みたいで新鮮味ありますし、何度も聞いていると音が劣化してしまうため、ひとつ聴くのに真剣になってしまったり、そしてあの温かみのある音はデジタルでは絶対表現できない領域ですね。

 そういうことから、アナログとデジタルでどちらが優位かなんて議論は個人的にはあまり興味がなかったりします。


時計もデジタルが普及した頃にアナログはなくなるのではという懸念がありましたが、実際全体の時間を計算したりするのは右脳の情報を経由できるアナログ時計に軍配があがりますし、アナログ、デジタルでどちらかが絶対的に優位ということはないと思います。


 ゲームブックも同じです。
確かに電子書籍になって利便性は格段に上がったと思います。
普段電話やメール、ネットをしている端末上で読める上、何冊持ち歩いていようがかさばらない、紙の日焼けや読むことでページに手の汚れが付く紙と違って劣化がない。そしてパラグラフを瞬時に移動できるリンクが設定されていること(リンクが付いていればの話ですが…)。

 紙の書籍に比べると格段と使いやすくなりましたが、逆に味わいみたいな感覚はなくなりました。
タッチすればリンク先に即移動できるのは確かに便利です。ですが、その中間の儀式が省略されたようになって味気がなくなっているような感も受けます。
 紙の書籍ではページを指でめくって任意の数字を探したりしますが、デジタルでは画面が速攻で切り替わるだけです。

 具材を切って炒めて煮込んで作るカレーとインスタントカレーのパックを茹でて作るカレーと、言ってしまえば極端なはなしですが、ある意味そういう面倒臭さやフラストレーションが逆に味を引き立てる部分もあるのかなと最近は思うようになってきました。

 そういう感覚を持っている人は割といるようすが、デジタルはデジタルで先ほど述べた利便性にすぐれていますし、決してデジタルだからゲームブックとは言えないとか、そういう極論はナンセンスかなと思います。


 CDが出はじめたときもアナログ盤主義者が、音楽はレコードで聴いてこそ音楽だ。CDなんてもので聴くのは「音楽」なんかではない。あれは「楽音」だなんて言い出しそうなほど凝り固まった人もいましたが、そこまで強迫観念にとらわれても何も産みだせないでしょう。

 デジタルにはデジタルの良さがあり、アナログにはアナログならではの味わいがあります。
どちらかに優劣をつけて自分に言い訳がましく説得したところで、自分の収入が上がるわけでも、世界が平和になるわけでもありません。だったら「プロセス」にはこだわらず、「結果」を楽しんだ方が有意義な生活を送れるのではないかと考えてます。

 自分が計画して執筆している長編もエキセントリックなシステム上、デジタルの配信だと恐ろしいほどやりづらくなるため、自費出版でもしようかなと考えてます。ま、その前に別の分野の計画を進めているのでいつになるかはわかりませんが。


 デジタルにふさわしいコンテンツなら、デジタルで出せばいいですし、
 アナログにふさわしいコンテンツなら、アナログで出せばいいです。


現代になってそのどちらかへの選択肢が増えたというだけなので、フレキシブルにそれぞれ選びたい方を各個人で選べばいいだけなのです。

どちらかが廃れるわけでもなければ
どちらかを廃れさせないといけないというルールも法律もないのです。
posted by 文芸遊戯研究会 at 19:05| コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

いろいろ紹介 B

いかがお過ごしでしようか。
なんか半袖にしたり上着をきたりと中途半端な季節になりましたよね。
もう街のBGMはクリスマスソングになってます。

クリスマスソングというと私的にはB’zの「いつかのメリークリスマス」といったところでしょうか。
この曲は結構古く自分が高校の時に販売された「FRIENDS」というミニアルバムに収録されました。この「FRIENDS」というアルバム、アルバム自体が男女の別れという一つのストーリーになっていて、物悲しい終わり方で占めるというバラードアルバムで当時は結構インパクトがありました。
 その反響を受けてか「FRIENDS 2」というミニアルバムが出ましたが、ストーリーにはなっていないようで、前作ほどの反響はなかったようです。

 同じく自分の高校時代に出たT-BOLANの「夏の終わりに」というミニアルバムもお気に入りです。エレキを全く使わずアコースティックギターだけで夏の終わりの世界観を上手く表現して、会いたいけど会えないという片思いの男性の心情を上手く表現しています。
このアルバムも反響を受けて「夏の終わりに 2」というミニアルバムが販売されましたが、「FRIENDS」同様、前作ほどのインパクトはなくそれで終わりました。
 やはりインパクトはイメージとは比例しないことの表れかもしれませんね。


 話は逸れましたが、今回はいろいろ紹介の第三弾です。ゲームブックの作成に直接関わるツールではないのですが、サブとして活躍するツールを紹介したいと思います。

 そのツールを紹介するにあたって一つ気になるニュースがありましたので、記事に入れておきます。


 新潮社の佐藤隆信社長は10日午後、横浜で開かれた図書館総合展で、著者と出版社の合意がある新刊に限って図書館での貸し出しを1年間猶予してほしいという考えを明らかにしました。本の販売部数は減少し、ピーク時の7割程度となる一方、公立図書館の貸し出し数は増加傾向にあり、2010年から販売部数を上回っています。

とのようなニュース記事を目にしました。
学生時代の同期に取次で働いている人と出版業界で働いている人がいますが、どちらも先行きが厳しいような話をしていました。

出版不況の原因はやはりIT化社会…いわばコンテンツのデジタル化によるものなのかなと睨んでいます。
確かにあらゆるものがデジタルで処理されつつある現代ですからね。物質的なコンテンツが隅に追いやられている現状は否定できないものです。

 そんな世知辛い出版業界で、売れると見込める委託本はある程度の儲けにはなるようなのでコストは掛けられるようですが、実用以外のコンテンツの買切本などは売れるかどうかの可能性が未知数なため、版元側も無駄なコストは掛けられないようです。もちろんそんな出版本は書店側も警戒してしまいます。

 こういったスパイラルが蓄積された形が今になって顕著に現れ出てきたようです。こういった問題を解決するのは正直なところかなり厳しいように思います。時代はIT化していますからね。

 ところが出版に関するコストですが、そういった時代のIT化を逆に利用して小出版社などはコストダウンを計っているところも出てきているようです。ITを真っ向から否定するのではなくコストダウンの方法として目を向けてみようという発想です。
 今回はそのコストダウンのために最近業界で注目され始めたツールを紹介したいと思います。

 ここでは、そんな法人側の都合の話は本来のコンテンツとはあまり関係ないため、そういったカテゴリーの話をしても意味はないのですが、例えば個人が自費出版されるさいのコストの削減のためにも一役買いそうなツールでもあります。

 どの分野でもコストを圧迫しているのは人件費です。現代社会になって人手でやってきたことが次から次へと機械やコンピュータに置き換えられてきました。
 最近のニュースではAIの機能を持つコンピュータが大学入試の問題を自動的に判別して回答するコンピュータが、私立の大学の入試を回答してしまい、約8割の大学に合格できるほどの精度まで発展したそうです。

 こういったソフトウェアは開発者の意向に沿って開発されるため、進化はするものの劣化することはほぼありません。当たり前ですよね。ソフトウェアが劣化したら開発者が改善しようとしますから。
 そして進化のスペースもめまぐるしく早いものです。カーナビだって10年位前は酷い精度で「これなら人力で地図見たほうが早い」なんていわれていたものの、今では人力を超えて人力では到達できない範囲までカヴァーするようになりました。

 一体、そのコンピューターの進化がどのようなコストダウンをもたらすのでしょうか?
コストがかかるならそれを回収するために方法がいくらでもあるじゃないかと思いがちです。

 ですが、コストがかかるからと顧客側にそれを安易には転嫁できないものです。出版に限らずどのようなカテゴリーの商品も外部側に転嫁すれば即ハイリターンとなる訳ではないのです。これは経済学を学ばなくともわかりますよね。
 そして商品のターゲット層を自ずと狭めるばかりか、生産販売元のイメージを下げる結果にもなりかねないのです。

 消費者側に立つ私たちはたかがイメージなんて…とか、顧客層ってそんなに重要なの?と、甘く見がちですが、商売の世界ではかなり重要なファクターを占めています。中小企業だと下手したら会社が傾くくらいの影響力を秘めていたりします。

 商いを経験してみればわかりますが、どのような分野でも商品の原料の質や量を下げるとか、商品の値を上げるとかの外部側への転嫁は、最後の最後の手段となります。
 その前に顧客とは直接関係ない部分のコストを削って対処しようとします。内部的な改革の実行ですね。
例えば昼休みに会社の明かりを消して電気代を減らすとか、原料搬出元やサードパーティーに値下げの交渉をするとかのコストダウンです。そういった内部的な改革でまかりきれない場合、最後の最後の苦肉の索として顧客側に痛み分けするような形で転嫁されます。この場合、結構潜在的なリスクは大きかったりします。消費者側としてはあまり実感はわかないものなんですけどね。

 IT化はコンテンツそのものの販売を担う業種にダメージを与えましたが、逆に武器としても使えるようになりました。
人間がやることを最小限にして、アルゴリズムでできることはできる限りアルゴリズムに任せてしまうことで人件費の削減や従業員への負担を減らそうという取り組みがなされている会社も出てきています。

  これからは「情報の共有化」の時代です。
そして合理化こそ重視される社会になりつつもあります。「プロセス」が主体だったバブル期に変わり、「結果」が主体の現代社会という話です。

 よって、人にしか出来ないことは人が行い、アルゴリズムでできることはアルゴリズムが行えば済むことです。

そしてアルゴリズムができる範囲は時代とともにどんどん拡大しつつあり縮小する可能性はなきに等しいといえます。
ようするに先ほど述べた合理性が追求されてきているわけです。


 寿司職人も専門のスクールで三ヶ月で習得できるのに、昔ながらの調理場などでは十年修行が必要だとかで、ホリエモンが苦言を呈した話がありましたよね。

 彼は非常に合理的な考えの持ち主です。

寿司を握る技術はそれをそのまま学んで覚えればいいだけで、皿洗いを何年もやったから寿司を握る技術が上がるかというとそうでもないと彼はいいたいのだと思います。
  三ヶ月効率よく習った職人が握った寿司と十年間修行した職人が握った寿司で味も食感も同じだったなら、当然得をしているのは三ヶ月習った職人のほうです。

  私もホリエモンと同じく合理的な考えのほうだったりします。

 機械でできることは機械にやらせればいいのです。機械で九割処理できるならその九割を処理して残りの一割を人手でまかなえばいいのです。単純に考えて、そうすれば今まで一時間かかっていた作業が6分で済みます。
機械でできることをわざわざ人間が行っても人件費がかかるなどハイコストにつながり、それがハイリスクにつながります。それに機械はミスしないですから漏れというのもありません。そして圧倒的に時間をも短縮できます。
 機械で見逃したことは後々人手でやればいいだけですし、その部分を指摘すれば機械というのはどんどん発展していきます。それの繰り返しにより人と機械との作業範囲を狭めていくのです。

 私の主観的な所感でしかありませんが、これからの出版は著者個人と印刷所の2つのやりとりで出版するケースが増えてくるかもしれません。ネット販売が拡大した今、取次さえも以前の影響力を失いつつあります。

 そういった、合理的な未来のために有望なツールをここで紹介したいと思います。





編集・レイアウトツール【InDesign】

http://www.adobe.com/jp/creativecloud/promotions/cc-campaign.html



 自費出版もピンキリでそのままデータを渡して本を印刷というわけにはいきません。

原稿が手書きならそれをデジタルのテキストデータに変換する必要があります。ではテキストデータをデジタルで作ったからそのまま印刷という訳にもいかないようです。

 法人の企画出版などでは書かれた原稿に対し推敲や校正、編集などの手が加えられます。売れるかどうか不明確なものになるとプロットや設定なども様々な検証が行われるようです。ま、版元にもよりますが…。

 個人の自費出版となるとあまりそこまでシビアにはなりませんが、少なくともそれらの過程は通しておいたほうがいいと思います。

 そしてテキストデータですが、テキストエディタで打ち込んでもワードなどのワープロソフトで打ち込んでも、そのまま書籍にはなりません。
 大体の印刷場ではInDesign(.indd)の形式でアウトプットしたものを印刷物として製本に仕上げるようです。PDF形式でも可能なところもあるようです。

そのため、印刷前の段階で入校されたテキストデータは一旦InDesignに流し込まれます。その作業も工賃が掛かったりするものです。

デジタルデータ変換から推敲や校正、編集、そして流し込みまで様々なコストがかかったりするものです。
ましてやゲームブックという媒体となればリンクミスや矛盾なんて問題も出てきます。

 そんな作業に人件費を捻出して、さらにテストプレイまで人を使うとコストは跳ね上がります。

コスト削減のためにはどうしたらいいか。
ま、簡単な話、どうしても人間でしか出来ない人間がやるとして、アルゴリズムでできることはアルゴリズムにやらせればいい。ホリエモンだったらそう答えると思います。

 やっぱり制作側もアナログの味わいが必要だという修行原理主義者は別として、使えるものはどんどん利用してコストや時間の短縮につなげるというのが時代に乗った現代人のビジネスワークだと思います。

 大企業でもそういったITリテラシーのスキルが低い人材はどんどんおいてけぼりを喰らってしまってます。

ものづくりにおいては一部を除いて手段は問わず合理的かつ効率的に作り上げたほうが良いと思います。ようするに結果が全てです。

 そこで、テキストデータで文章書き起こしてInDesignで入稿するまでの工程を創作者側でやってしまうという方法でコストダウンを計ります。

これの利点はInDesign上の画面に現れたままのレイアウトで印刷されるという点です。
例えばパラグラフの文章をページごとに分けたい場合とか、文章のレイアウトを考える場合など画面で見たままのレイアウトで出力されるために、著作者がそのまま編集できてしまいます。
 ソフトウェアも以前は高価でしたが、いまやクラウド化により月額制になったことにより個人でも手に届くツールとなりました。


 小説家の京極夏彦氏なども文章をInDesignにて出力して印刷所に直接渡しているようです。彼は編集やルビ付けも全て自分で行っているようです。そういったマルチに対応するスキルを持ち合わせているからこそ、独創的な作品が作れるのかなと自分では推測しています。

 データをInDesignでアウトプットすることにより、外部での編集やレイアウト、そして流し込みの作業を外部委託することなく著者自身で行えるようになると思います。ソフトウェアに費用はかかりますが、複数出版を考えているなら導入を検討してもいいかもしれません。





校正・推敲支援ツール【Tomarigi】

http://www.pawel.jp/download/tomarigi/



 青山学院大学内の日本語表現法開発プロジェクトで制作された校正・推敲支援ツールが「Tomarigi」です。
何と言っても無料なのがいいですね。ちなみにWindows7以降で動きます。
 テキストエディタとしても使用できる点は便利です。以前はあまり使い物にならないような話も聞かれましたが、時代の流れとともにソフトウェアもめまぐるしく発展して現代にまで至りました。

 このソフトウェアは前からなんとなく知ってはいましたが、プラグイン形式を用いているので校正のルールが自由に設定できます。
そして文章ごとに切り分けて前後の単語と照らし合わせてチェックしているようです。
軽く使ってみた限り結構精度が高くてびっくりです。まだまだ完璧と言えない部分はありますが、ソフトウェアは進化しつつあるので人力に変わるのも時間の問題かもしれません。自分自身割と文章が雑なほうなのでこういうソフトウェアと出会えたことに感謝しないといけませんね。

 残念ながら時間の都合によりこの記事の文章は推敲していません。無料なのでとりあえず試してみるといいかもしれません。
 どうでもいいことですが昔に付き合っていた彼女が青学出身だったりします。(どーでもいいって…)




文章校正支援ツール 【Just Right!5 Pro】

http://www.justsystems.com/jp/products/justright/


Just Right!は、高度な日本語処理技術を駆使し、誤字・脱字、表記ゆれなどをスピーディーにチェック。人の目に代わって、細かなチェックを行うため、校正作業の負担を軽減します。例えば、表記ゆれや用語基準などのチェックは、Just Right!に任せ、文意や事実の確認は、校正者が行うようにすれば、文書の品質を確保した上で、大幅な校正時間の短縮が実現できます。

との説明書きのジャストシステムが販売する法人向けの文章校正支援ツール。

法人向けに販売されており、出版社でも採用しているところがあるみたいです。もちろん個人向けにも販売されていますが、5万円近い値となっています。月額制で使用権をレンタルする方法も用意されています。

 私は試していませんが、使用した人の感想では「すごいの一言に尽きる」とか人力を超えたとか校正支援では最強との意見があるようで、やはり法人向けに販売しているだけあるなと感じます。法人やプロ向けはごまかしがききませんから。

 カタログを見た限りものすごい機能です。人力でありがちな見逃しもプログラムだとありえませんし、時間もかかる人力と違いほぼ一瞬で検査しますから、こういう作業はソフトウェアの利点を生かせる分野かもしれません。

 まあ、個人ではなかなか手は出しにくい値ですから。でも法人ではこのソフトを導入してコストダウンを計っているところもあるみたいです。長年使うなら人件費払うよりは効率いいですからね。

 こういったソフトが人手に変わって台頭するようになる時代ももうすぐそこまできているようです。




文章校正支援ツール 【ATOKクラウドチェッカー】

https://jproofreading.atok.com



前述の「Just Right!5 Pro」はちょっと個人には高価だという方は、同じジャストシステムが提供する「ATOKクラウドチェッカー」を使ってみては。
無料ではありませんが「Just Right!5 Pro」ほど高価でもありません。そしてソフトウェアではなくクラウド形式をとっているため、インストールの必要はありません。

これを利用するにはATOK Passport [プレミアム]に加入が条件になります。月額476円(税抜)ですが、払えない金額ではなので物書き作業が多い方は契約してみるのもいいでしょう。もちろんこのプランにはATOKの機能も提供されます。

「Just Right!5 Pro」と違い細かい設定はできないようですが、一般的な校正はされるようで、評判もいいようです。



そのほか、校正ツールは結構な数が出回っています。時間の都合により全ては試していませんが、これらのツールはひと昔前と違い格段に進歩したようです。自費出版はしたいけど、無駄なコストは掛けられないという方は是非検討してみてください。


 そしてATOKを実装するワープロソフト「一太郎」もこういったエンジンを使用してきているようです。
そのうち、入力した文章が入力された直後に即時に校正されるなんて未来もそう遠くはないでしょう。




リンク検証【GameBookCompiler】

http://game-book.seesaa.net/article/412026556.html


ゲームブックを作った場合は、それをテストプレイして間違いがないかどうかを確かめなければなりません。
自分でテストしたり、友人にやってもらうといった方法もありますが、人の力だと抜けミスの可能性も拭いきれずに、さらに膨大な時間も講じてしまいます。

 リンクミスに限っていうならば「GameBookCompiler」はかなり有用なソフトウェアといえるでしょう。
基本はパラグラフ番号をシャッフルするツールですが、その処理後にリンク抜けしていたり、逆にどこからもリンクされてないパラグラフなども指摘するログを残してくれます。まさに痒いところに手が届くツールでもあります。





デバッグ 【The GameBook Authoring Tool】

http://game-book.seesaa.net/article/372009026.html



デバッグ作業に持ってこいのツールならこれしかありません。「AXMA Story Maker」や「Twine」などもありますが、見やすく使いやすいのは圧倒的に「The GameBook Authoring Tool」しかありません。
 文芸遊戯研究会がこのツールを強く推し進めるのも理由があります。

 作ってみるとわかるものですが、ゲームブックというのは本当にバグが出るものです。しかもそれに気づかないものです。

時系列を軸に進む単一方向型のゲームブックを作るとよく生じるのが矛盾というバグ。
あるパラグラフである人に会い主人公に向かって「昨日渡した酒は飲んだかい?」というような声をかけるシーンに当たったとして、昨日にその人物に出会ったパラグラフから飛んできた場合と、その人とは会っていないパラグラフから飛んできた場合、後者のパラグラフから飛んできた場合は、まったく知らない人物から「昨日渡した酒は飲んだかい?」と全く訳の分からない展開となってしまいます。

 実を言うと作ってみると、こういうミスは結構多いのです。どんなに注意を払っていても出てきたりするものです。
いわば複数人のスケジュールを頭に叩き込んで、それに合わせたToDoリストを計画するようなものかもしれません。

 これは実際に時系列を軸にゲームブックを作成してみればわかると思います。

それを防ぐにはどうしたらいいか。いちばん効果てきめんなのは全体の動きを視覚情報にすることです。いわばフローチャート図を作ることです。
 フローチャートを作っておけば、いざ文章で矛盾が見つかった時にすぐにリカバリーできます。図表がないとおそらく改善できないばかりか他の矛盾点を新たに露出してしまう結果にもなったりします。(実際に経験済み)

 コンピューターが珍しかった時代に書いた先人たちは、美術用の巨大なロール紙を大きなテーブルの上に広げて、フローチャート図を作成していたようです。

ノートに書くという手もあるのですが、決まってスペースがなくなり、次のページへ何本も矢印を引いたりした結果、逆にみづらくなったりします。アナログでやるなら一枚の紙にまとめた方がいいでしょう。

 コンピューターが台頭し始めた一昔前は、ワードとエクセルを用いたりもしてました。様々な用途に使えるマルチツールですが、専用に使い切るとなるとそれは不便でした。ワードで文章を書き、エクセルでフローチャートを作ってアクティヴウィンドウを何回も切り替えて、本文とフローチャートを行き来したらしたでメモリのリソースを消耗してフリーズ何てこともちょくちょくありました。せっかく書いた文がオシャカです。
 エクセルも本格なフローを書くにはかなり手間と時間がかかる上に見辛いものでした。

 なんか本文と選択肢を書くと自動的にフローチャートが作られて、そのフローチャートのオブシェクトをクリックするとそこの文と選択肢が表示されるようなツールはないのという声に対応したのが「The GameBook Authoring Tool」です。

 リンクされているか否かは全て矢印で表示されているので見分けも付きますし、フローチャートを追いながら本文も参照できるので本当に便利です。矛盾点もすぐに判明して対処できたのもこのツールがあったからこそですね。




 アナログ全盛期に先代が汗水たらして苦労して書いたゲームブックが、そして大勢の人が役割を分担して人海戦術にて出版していたゲームブックが、ITの進化でかなり手軽に作れてコストをかけずに出版できるようになったのは、やはり時代の流れなのかもしれません。
 そうなると、私たちは恵まれた環境に今立っていることの表れなのかもしれません。
利用できるものは利用した方が便利なのです。






posted by 文芸遊戯研究会 at 18:16| 制作ソフト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする